2022年6月号特集② 身近な単位の秘密

 私たちは日常的にたくさんの単位を使っています。大きさ、重さ、広さ、速さなど、いろいろなものを表すのに欠かせない単位は、社会の“ものさし”と言えます。世界中の人が、1メートル、1キログラムはこれくらい、という同じ“ものさし”を持っているので、情報を共有でき、うまくコミュニケーションがとれるのです。
 皆さんがよく使う「メートル」と「キログラム」の基準は、どのようにして決められたのでしょうか? 普段何気なく使っている身近な単位の秘密にせまってみましょう。

世界共通の単位はどのようにしてうまれたのか?

不統一による混乱をなくすために

 長さや距離はメートル(m)、重さはキログラム(kg)を使って表しますね。メートルとキログラムは、「国際単位系(SI)」(以下、SI)の基本単位です。世界共通の単位のことで、基本単位はメートル、キログラムを含めて7つあります(下図)。「単位系」とは、基本単位とそこから導かれる組立単位(=後述)を合わせた単位群のことです。SIは「国際単位系」を意味するフランス語のLe Système International d’Unitèsを略したものです。
 国際的に使える実用的なSIは、どのようにしてうまれたのでしょうか?

▲SIの7つの基本単位

フランスの呼びかけで「メートル条約」締結

 かつて世界では国や地域ごとに様々な単位が使われていました。しかし、18世紀後半以降、国際化が進み国交が盛んになるにつれて、商売や取引などで、単位が異なることによる混乱が生じるようになりました。そこで、フランスで単位を統一しようという動きが広がり、メートルとキログラムを基本単位とする「メートル法」が制定されました。
 その後、フランス政府が世界に向けて単位の統一化を呼びかけたことで、1875年、メートル法を国際的な統一単位とする「メートル条約」が17か国で締結されました(日本は1885年に加盟)。

実用的な単位系SIの誕生

 メートル条約が締結されてからも、次々に新たな単位系が考案されました。しかし、それぞれ共通性がなかったため、統一が図れないという問題がありました。
 そこで、1954年に開催された国際的な単位を決める会議「国際度量衡総会」で、長さ(距離)、重さ(質量)、時間、電流、熱力学温度、物質量、光度の7つを基本単位とすることが決定。その後、国際単位系という名称と略称SIが採用されました。
 SIには7つの基本単位と、基本単位を組み合わせた組立単位があります。組立単位は、「平方メートル(㎡)=面積」、「立方メートル(㎥)=体積」、「メートル毎秒(m/s)=速さ」など数えきれないほどありますが、すべて世界共通の単位です。国を越えて世界の誰もが同じ単位を同じ認識で使えるのは、とても便利なことですね。

約4年ごとにフランスで開催。

基準決定までの道のり「メートル」編

 1983年の国際度量衡総会で、1メートルの定義がこのように改められました。この定義に至るまでの変遷をたどりましょう。

子午線の長さから1メートルを決定

 18世紀のフランス。世界的に通用する単位をつくろうという動きが広がる中で、正確な長さの基準を決めるために採用されたのは、「北極点から赤道までの子午線の長さを基にする」という方法。パリを通る子午線上に位置するフランスの都市ダンケルクと、スペイン・バルセロナまでの距離を測って北極点と赤道間の距離を算出し、その1000 万分の1を1メートルとすることになり、測量が始まりました。
 数年がかりで行われたこの測量結果を基に1799年、白金(プラチナ)製の最初の「メートル原器」(1メートルの長さを示す標準器)がつくられ、これが長さの基準になりました。

「絶対に変わってはいけない」ものでなければならない

 1889年に開催された第1回国際度量衡総会で、白金とイリジウム合金でできた新たなメートル原器が「国際メートル原器」として承認され、“メートル原器に刻まれた目盛り線の間隔を1メートルとする”という新しい定義が定められました。しかし、これには大きな問題がありました。
 単位の基準は、「何があっても絶対に変わってはいけないもの」ですが、人の手でつくられた物体である以上、ほんのわずかではあっても年月を経ることで伸び縮みしたり、衝撃によって欠けてしまったりする可能性があります。
 この問題を解決するためには、「物ではなく絶対に変わらない基準」に変更する必要があります。そして最終的にたどり着いたのが「光の速さ(光速)」でした。真空中では光は、光の波長や光が進む方向などに影響を受けず、常に一定の速度で進みます。この性質を利用して、1983年、1メートルの定義が冒頭に示したように改められたのです。

基準決定までの道のり「キログラム」編

 2018年11月に行われた国際度量衡総会で、キログラムの定義が物理定数の「プランク定数」を基準にすることに決まりました。これは、1889年にキログラムの基準として「国際キログラム原器」が承認されて以来、130年ぶりの改定でした。

国際キログラム原器が1キログラムの基準に

 18世紀頃、1キログラムは1リットルの水の重さと定義されていました。1880年代になると、水よりも扱いやすい人工物として国際キログラム原器が製作されました。国際キログラム原器は、白金とイリジウムの合金製で、直径・高さともに39㎜の円筒型。これを質量の定義とすることが、1889年の第1回国際度量衡総会で承認されました。
 また、国際キログラム原器と同じ材料で40個の複製がつくられ、メートル条約に加盟している国に配布されることに。日本にもそのうちの1つが割り当てられました。

すべての基本単位が普遍的な定数に基づくものに

 国際キログラム原器は、フランスにある国際度量衡局で厳重に保管されていたものの、ごくわずかながら汚れなどで重さが変動する可能性のあることが指摘されていました。そこで、決して変わることのない普遍的な定数に基づく新たな定義が求められるようになり、様々な提案が出された結果、冒頭に示したプランク定数を基準にした定義へと変更されたのです。
 これまで、キログラムはSI基本単位の中で唯一、国際キログラム原器という人工物によって定義されてきました。それが歴史上初めて、人工物ではなく定数を基にした基準に改められたことで、SIはより長期的に極めて安定した単位系として使用できるようになりました。

関塾

タイムス編集部

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