関塾タイムス4月号 特集 キミが輝く進路をつくろう ―10年後、25年後の社会を見据えて


関塾タイムス4月号 特集 キミが輝く進路をつくろう ―10年後、25年後の社会を見据えて

 キミは自分の未来像をどんな風に思い描いていますか? 進路についていろいろと悩んでいる人も多いと思いますが、近年、進路は“選択するもの”ではなく“つくるもの”とも言われています。10年後、25年後は、より進化したAIが様々な場面で活用され、今とは全く違った世界になっているかもしれません。そんな社会を生き抜くには、どんな力が必要とされ、その力を身につけるためにはどのように進路を決めればいいのでしょうか? 教育クリエイターの秋田洋和さんに、自分に合った進学先を探すためのポイントや、入試制度の種類、近年の傾向などについて詳しく解説していただきました。大学や学科選びのヒントにしてくださいね!

令和版 自分の進路・将来とどう向き合えばいいの?

 1970~80年代に中学生や高校生だった人たちは、その多くが「いい高校・大学に入って有名な会社に入れば一生安泰だ」と言われていました。この言葉は、皆さんも知ってのとおり、1990年代以降、社会の仕組みが大きく変わったことによって通用しなくなっています。 皆さんが社会の第一線に立っているであろう2050年頃には、世の中はもっともっと様変わりしているはず。新学期を迎えるこの時期に、進学から就職へと続く“自分の進路と将来”に向き合ってみましょう。

想像できる未来をしっかり見据える

 まず、皆さんが社会に出る頃に直面する社会課題は「少子高齢化」でしょう。表1を見てください。

 改めて見るとビックリしますよね。皆さんも普段の生活の中で、社会保障費の増大や、労働力不足といったすでに表面化している問題は、耳にすることがあると思います。
 これからの世の中全体が抱える課題はこれだけでは収まらないでしょう。それら一つひとつが昭和の頃と比べて格段に複雑な背景を持っているため、「これが正解だ」と言える解決策は誰にもわからないのです。
 2050年の日本の姿は、大きく言えば、この国で生活する全員が出生数減少という問題とどう立ち向かい、それに伴う環境の変化にどう順応していくのか、この“未来を想像する力”が命運を握っているといっても過言ではありません。
 誰も経験したことのない急激な変化なのですから、たとえ小中高生であっても、「2050年? そんな先のこと、わからないよ。誰かがなんとかしてくれるでしょ」と他人事にせず、世の中の変化にしっかりと向き合う必要があります。
 つまり、今、中学生や高校生であれば、「2050年に自分自身がどのような生活や仕事を求めるのか」をできるだけ具体的にイメージし、それを実現するための努力や課題解決のための情報収集を始めておかなければ、これからの急激な変化についていけなくなるということです。
 この点が、昭和時代に中学生や高校生だった人たちと、今の中高生との決定的な違いです。皆さんには、受験や面接などを通して、「少子高齢化社会の一員としての当事者意識」と、「正解のない問いに挑む習慣」が問われ続けるであろうことを覚えておいてください。

「22歳の自分」から逆算して今、何をするべきか

 とは言っても、まだまだ先の2050年のことなんて想像できないというのも仕方のないことでしょう。であれば、まずは皆さんが大学を卒業して社会人になる時、つまり「22歳の自分」の姿から考えてみませんか?
 その時に皆さんに求められるのは、
①正解のない問いに挑む姿勢
②一生学び続け、常に自分をアップデートする徹底した自己管理能力と向上心

――この2つだろうと考えます。それぞれについて説明します。

①正解のない問いに挑む姿勢
 現代は、自ら社会課題を見つけ、その対策を考えたり解決法を見いだしたりする能力が求められています。少なくとも“正解のある問いでさえすぐに諦め、挑戦しようとしない”人は、言うまでもなく必要とされなくなります。
②一生学び続け、常に自分をアップデートする徹底した自己管理能力と向上心
 志望校合格も就職も、ゴールではなく長い人生のひとつの通過点に過ぎません。向上心を忘れず、常に自己研鑽に励み、変わりゆく世の中の流れについていくことが、これからの時代には必要です。

 中学生や高校生の時から意識的に、こうした資質を養うことが大切ですが、日々一人ぼっちで向上心を持ち続け、努力を続けるのはとても大変なことです。
 だからこそ、部活であれ勉強であれ、「同じ目標を持つ、同じ未来を見ている仲間」と出会うこと、時間や空間を共有できる環境に身を置くこと、そして、その環境を手に入れることが重要です。
 残念ながら、高校以降こうした環境は誰かが用意してくれるものではなくなります。自ら動いて自らの力で手に入れるしかありません。
 この一番わかりやすい機会が受験であり、自分の将来を決めていく第一歩になることをしっかりと覚えておいてください。こうした環境が評価されている高校や大学は、当然ながらそれを求める志願者が多く集まり、人気があるのです。

今後増える「高大連携」にも注目

 世の中の変化を受けて、積極的に自分の将来を考える高校生を応援するため、公立 ・私立を問わず全国の高校(私立の場合は中学も)と大学が連携・交流する「高大連携」が近年、注目されています。
 例えば……
吉祥女子中学・高等学校(東京都)
 東京理科大学と高大連携を結び、生徒たちの「理系への興味関心」に応えています。学校の授業内で行う実験や観察だけでなく、東京理科大学との連携により、積極的に大学での研究に触れる機会をつくっています。
 同校では、東京外国語大学東京農工大学東京医科大学など、あわせて7つの大学との連携を実施。生徒たちはいろいろな情報を得て将来の進路を考えることができます。
九州大学(福岡県)
 大学側が出向くケースもあります。九州大学では「出前講義」と名付けて、教員の皆さんが依頼のあった九州各地の高校に足を運んでいます。

 まずは、22歳の段階で自分が「こうなっていたい!」という姿をできる限り具体的にイメージしてみましょう。説明会やオープンキャンパスに足を運ぶなど、その未来像を現実にするために動き出すと、同じ目標を持つ人の存在や環境が目に入ってくるようになります。あなたが希望する学びや将来とのつながりを知るための機会は、自ら求めて動かない限り、手に入らないのですから。

しっかり確認しよう! イマドキの大学受験

 いざ進路選択!となった時に必要となるのは、受験を突破するための学力です。そして、複雑な大学入学者選抜の仕組みや傾向についても、ある程度の知識は持っておかないといけません。ここでは、大学進学を目指す皆さんが知っておくべき「大学入学者選抜の基本知識」について解説します。

 志望校を決定する際には、大きく次の3つのポイントを確認しましょう。
①国公立大学 or 私立大学
②一般選抜 or 総合型選抜
③文系 or 理系 or 文理融合

 ひとつずつ順番に説明していきます。

国公立大学と私立大学の違いに注目!

 国公立大学と私立大学の違いは?と聞くと、真っ先に学費の差を挙げる人が多いと思います。しかし受験生にとっては、「入学者数」と「一般選抜の利用率」の違いが一番の注目ポイントではないでしょうか。
 表2を見ると、国公立大学の入学者数が私立大学に比べてかなり少ないことがわかりますね。国公立大学を一般選抜で受験する場合には、「大学入学共通テスト」と各大学が実施する「二次試験」の2種類の結果が求められるので、狭き門であると同時に、試験終了の時期が遅くなります(合格発表は3月)。
 次に私立大学を見ると、一般選抜利用者の割合は38.3%、つまり、入学者の5人に3人が総合型選抜を利用していることがわかります。

加速する「推薦・総合型選抜」入試

 次に、総合型選抜について詳しく見ていきます。私立大学はもちろん、近年は国公立大学でも総合型選抜による試験が普及しています。この10年の変化を表3にまとめました。 国公立・私立の種別をなくしてしまうと、すでに大学入学者全体の半数以上が、総合型選抜を利用して合格を勝ちとっています。

 実際、国公立大学でも総合型選抜を導入する割合は増えていて、東京大学と京都大学でも、そろって2016(平成28)年度の大学入試から、「ペーパーテスト以外の資質」も考慮して入学者を決める「推薦入試(京大の名称は特色入試)」が始まっています。
 東北大学は、「2050年までに総合型選抜の割合を100%にする」と発表しています。全国的にはあまり知られていないかもしれませんが、こうした傾向は今後、全国に広がっていく可能性があります。
 皆さんは、東京大学が2027年9月に新学部を開設するというニュースを耳にしたことがありますか? 1958年の薬学部以来、およそ70年ぶりの新学部開設で、学部の4年間と大学院修士課程の1年間を合わせた5年制の文理融合学部、授業はすべて英語で実施、そして日本ではまだ馴染みの薄い秋入学、選抜には総合型選抜を利用……と、話題が多すぎてついていけないほどです。
 これをきっかけに、総合型選抜の普及がさらに加速する可能性が十分にあることを頭に入れておきましょう。そしてもうひとつ、「文理融合」という言葉にも注目しておきましょう。

文系 or 理系 or 文理融合

 実は近年、国立大学を中心に「文理融合」を前面に打ち出した新学部の開設が増えています。複雑化する社会課題を解決していくため、文系・理系両者の知識や視点を統合していく必要があるからです。その象徴が、表4に示したデータ・情報を扱う学部です。

 例えば大妻女子大学は《「統計・情報・経済・経営」の4つの分野を土台に、データから未来をつくる力を育てる》と明言しており、まさに文理融合をカタチにした学部だと言えます。
求められるスキルは?
 現代は、スマホに代表される情報通信技術の急激な進化によって、企業の経営情報はもちろん、渋滞情報や天候の予測、SNSの広告分析からプロ野球の変動チケット代金の決定まで、「データの収集・分析・活用」が不可欠となっています。
 こうしたデータを扱える人材(データサイエンティスト)の育成が急務と言われており、国立大学が次々と新しい学部をつくって社会の変化に対応しようとしていることからも、その緊急性がうかがえます。
 具体的に必要とされるスキルは、「収集したデータから価値を創出し,課題に対する解決策やアイデアを出すこと」。今は、性別や年齢は関係なく、自分の得意分野がある人の方が必要とされます。自分の勉強した一つひとつの事象が将来、実社会の具体的な問題解決に直結し、目に見える成果や変化をもたらす可能性があるって、本当にすごいことだと思います。
大事なのは自分が身を置く環境
 一方で、多くの高校生にとって「文理融合? いや数学苦手だから……」と壁があるのも事実でしょう。しかしこれは前で述べたとおり、「自分が身を置く環境」によって、いくらでも状況を変えることができます。
 理系に進む生徒すべてが、数学が得意かといえば、そんなことはなく、むしろ不安に思っている人が多いという調査結果もあります。いざという時にキミを助けてくれるのは環境です。数学で心が折れそうになった時、絶対に大丈夫だと背中を押してくれる人が周りにいるかどうか。一緒に励まし合いながら歩みを進められる仲間がいるかどうか、が重要なのです。
 もしも高校で私立文系コースに進んだら、周りが私立文系への進学を目指した準備をする中、ただ一人数学と向き合い続けるのは難しいはず。
 今後ますます増えるであろう「文理融合」の学部や仕事を目指すのなら、ちょっと背伸びしてでも同じ目標を持つ仲間がたくさんいる環境に身を置くことをお勧めします。「数学苦手だもん、ムリだよ」という声が飛び交う環境とは距離を置く。これも自らの進路・将来を決めていく際の大きな一歩なんだということを覚えておいてほしいと思います。

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