2022年4月号特集② 脳の動きを知ろう

 私たちは、何かを考えたり、覚えたり、体を動かしたり、何をするにも脳を使っています。私たちが得たすべての情報は脳に送られ、脳はその情報に応じて、体をどう動かすかといった指令を全身に出します。
 脳の働きは非常に複雑で、現代医学や科学の力をもってしても、いまだに解明されていないことがたくさんあります。それは、脳が宇宙にたとえられるほど壮大で不思議な構造を持つ臓器だからです。神秘に満ちた脳の仕組みと記憶のメカニズムを探ってみましょう。

脳の中をのぞいてみよう

大脳が全体の8割

 ヒトの脳の重さは、成人で平均1400グラム(体重の約2~3%)。大きく大脳小脳脳幹の3つの部分からなります。

大脳
 脳全体の80%を占めます。表面を覆う「大脳皮質」は、前頭葉頭頂葉側頭葉後頭葉の4つの領域に分けられ、場所によってそれぞれ異なる役割をしています(上の図参照)。この中で“脳の最高中枢”とされるのは、前頭前野です。前頭前野は、言葉を話す、ものごとを理解して覚える、喜びや悲しみなどの感情をつくり出す、してはいけないことを我慢するなど、人間らしい思考や行動に大きく関わっています。

小脳
 大脳の後頭葉の下側に位置し、容積は脳全体の10~15%程度。眼球や手足の動きの調節、姿勢の維持などに関わっています。

脳幹
 中脳、橋、延髄からなり(間脳を含む場合も)、呼吸や心拍、体温調節など生命維持に関わる重要な働きをしています。延髄の先は背骨に沿って走る神経の束、脊髄につながっています。

1000億個の神経細胞がネットワークを形成

 脳は、神経細胞(ニューロン)グリア細胞という2種類の細胞からできています。脳の活動を担う主役は神経細胞です。ヒトの脳には、1000億個以上の神経細胞があると言われ、これらが互いにつながり合い、複雑なネットワークをつくっています。このネットワークで情報伝達がどのように行われているのか、詳しくみてみましょう。

情報伝達の仕組み

 体の内外で起きる様々な情報は電気信号になり、神経細胞へ伝わります。下の図に示したように、神経細胞の本体の「細胞体」からは細長い突起が何本も出ていて、神経細胞はこの突起で他の神経細胞とつながり、信号をやりとりしています。
 突起は樹状突起軸索の2種類あり、樹状突起は他の神経細胞からの情報を受け取る入力装置として、軸索は受け取った情報を次の神経細胞へ伝達する出力装置として働きます。細胞体から出た軸索は、何本かに枝分かれしながら他の神経細胞の樹状突起につながります。このつなぎ目のことをシナプスと言います。

 神経細胞を伝わる情報は、シナプスを通る時に電気信号が化学信号に変わり、再び電気信号になって次の神経細胞に伝わります。シナプスには小さな隙間があり、そこで放出される化学物質が信号の受け渡しを助ける働きをしています。
 脳の中にある1000億個以上の神経細胞は、それぞれ数個~数万個の神経細胞とつながり、シナプスで結びつくことで情報を伝え合っています。このようにしてできた複雑なネットワークの中を膨大な情報の信号が行き交うことで、脳の活動が行われているのです。

ずっと覚えている記憶とすぐ忘れる記憶の違い

 ヒトが記憶するメカニズムは謎に包まれています。一夜漬けで覚えた数学の公式はすぐ忘れてしまうのに、小学校で習った九九をずっと忘れないのはなぜだと思いますか? この秘密にせまってみましょう。

シナプスの大きさが変わる 

 記憶には、一度覚えると脳に長く残り続ける長期記憶と、時間が経つと忘れてしまう短期記憶があります。
 新たに物事を記憶する時には、シナプスの形が変化します。同じことを繰り返し学習すると、同じシナプスに何度も信号が送られ、シナプスが大きくなることがわかっています。信号を何度も受け取るシナプスほど大きくふくらみ、それに応じて信号が伝わりやすくなります。

▲記憶の前後では、シナプスの大きさが変わるなど神経細胞のネットワークに変化が起きています。

 一方、受け取る信号が少ないとシナプスはだんだんと縮んで小さくなったり、最終的になくなったりすることが確かめられています(上の図参照)。
 繰り返し学習して何度も同じ信号が送られたシナプスは大きくなり、記憶として定着する一方、一時的や短時間だけ覚えておくといった情報は、シナプスに信号が繰り返し送られないので、シナプスが消滅する――つまり記憶として残らない可能性が高いのです。
 記憶を脳に定着させ知識を身につけるには、同じことを繰り返し学習することが重要だということですね。
 また、複数の感覚器を通した情報は、より強い刺激となって脳に伝わるため、目や耳などを同時に使うのも効果的な学習法です。勉強する時は、「声に出して読む」「手を使って書く」などを同時に行うと記憶として残りやすくなります。

関塾

タイムス編集部

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