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豆を買うお金もないので…

むかしむかし、貧しい暮らしの夫婦がおりました。節分の日、近所の家々からは「福は~内!鬼は~外!」と元気なかけ声が聞こえてきます。
しかし、夫婦には節分の豆を買う金がありません。

しばらくして、夫は空からの枡を持って立ち上がり、 「鬼は~内!福は~外!」と逆のことを言いました。妻がびっくりして理由をたずねると、「毎年まじめに働いているが、福の神はやって来ない。いっそ鬼を呼んでみるかと思ったのだ。なに、鬼が来ても、うちには盗る物が何もないから心配はない」と言うのです。
それもそうだと妻も「鬼は~内!福は~外!」と、夫のまねを始めました。
すると、あっちこっちで豆をぶつけられ、 痛い思いをしていた鬼たちが、「これはいい家があった!助かった!」と駆け込んで来たのです。びっくりする夫婦に、鬼たちは「さあさあ、もてなせ」と迫ります。しかし、鬼にごちそうする金がありません。それを打ち明けると、鬼は虎の皮の腰巻(=パンツ)を渡し、これを金に換えて来るようにと言いました。夫が質屋に腰巻を持ち込むと、珍しい品であったので、千両もの大金になりました。

夫婦はたくさんの食べ物を買い、鬼たちをもてなしました。節分が終わると、鬼たちは「余った金は好きに使うがいい」と言って、山へ帰って行きました。「ようやく、うちにも福の神が来た」 夫婦は喜び、それから節分には「鬼は~内!」と言うようになったそうです。

節分で「鬼も 4 内!」のかけ声

節分には、邪悪な存在(=鬼)を滅する「魔滅」に発音が似ている豆をまきます。その際のかけ声は、ほとんどが「福は内、鬼は外」ですが、鬼を祀る神社などでは「福は内、鬼も内!」と言うそうです。「鬼」がつく地名や姓の多い地域でも、「鬼も内!」というかけ声で豆まきをするそうですよ。

   

優しい鬼の話

高知県に伝わる『岩になった鬼』は、山奥に住んでいた鬼の親子が、海が荒れて困っていた人間のために犠牲になった話です。鬼のお父さんは、嵐を鎮めようと大岩を担いで海に入って行きました。子鬼は、お父さんの肩に乗って離れようとしません。お父さん鬼は岩と一緒に海に沈んでしまいましたが、おかげで荒波を防ぐことができました。子鬼はいつまでも泣き続け、とうとう岩になってしまいました。鬼が沈めた大岩は双名島、子鬼は烏帽子岩として、今でも残っています。 昔話では、悪者として登場することが多い鬼。しかし、中には人の気持ちがわかる、優しい心を持った鬼もいるのです。

   
 
     
     
 

「おれが一番大きい!」

むかしむかし、デイラボッチという山よりも大きな男がおりました。本当に大きな男でしたので、どんなに遠い場所へも一足飛びで行くことができました。 ある日、相模国(神奈川県)にやって来たデイラボッチは、びっくりしました。なんと、自分よりも大きな富士山が見えたからです。「おれよりも大きな山とは生意気な。海へ持って行って、沈めてしまおう」 デイラボッチは、藤のツルで縄をつくり、富士山にくくりつけて引っぱろうとしました。ところが、富士山はびくともせず、縄が切れてしまいました。デイラボッチは、もっと太い縄を作ろうと藤のツルを探しましたが、見つかりません。デイラボッチは地団太を踏み、「ええい!悔しい! もうこの土地には藤のツルは生えてくるな!」と言ったそうです。以来、相模原(相模国北部)には藤のツルは生えてこないということです。また、デイラボッチが富士山を引っ張ろうと踏ん張った時に、鹿沼と菖蒲沼ができたそうです。

   

山や湖などをつくった巨人

デイラボッチにまつわる民話は、全国各地に伝わっています。地域によって「だいだらぼっち」や「だいらんぼう」など呼び方は様々です。奈良時代の『常陸国風土記』によれば、茨城県の大串貝塚は巨人が食べた貝を捨てた場所だとされています。
他にも、巨人が富士山をつくった話が伝わっています。その一つが、富士山をつくるために土を運んだので琵琶湖ができたという伝説です。群馬県の榛名湖も、巨人が土を掘った跡だと言われています。静岡県の浜名湖は、巨人が手をつき涙が溜まってできたそうですよ。
こうした巨人の話は、国づくり神話から生まれたと言われています。

   
   

物語の共通点を探そう

人から人へと語り継がれてきた民話。異なる地域で似たような話が伝わっていることがあります。   例えば、女の幽霊が我が子を育てるために飴を買いに来る話は、京都府や福岡県などに伝わっています。 また、雪女の話は、青森県や岩手県をはじめ、新潟県、長野県など雪の多い地域を中心に広く伝わっていますが、同じ雪女が登場してもストーリーがまったく異なる話を読むことができます。雪女とは逆に、鶴やオオカミ、シジミなど登場するキャラクターたち は違うけれど同じ“恩返し”をテーマにした民話もたくさんあります。雪ん子、狐の嫁入り、狐と狸の化け比べなど、キャラクターやストーリーの共通点を探してみると面白いですよ!

   
 
     
     
 

「これより天へ昇ります」

むかし、豊後国(大分県)に吉四六さんという人がいました。この吉四六さん、大変な怠け者でありました。ある時、「田んぼの代掻き(田植え前に水を入れ、土を掻きならす作業)が面倒だなあ。どうにかして楽できないかなあ」と考えた吉四六さん。田んぼの真ん中に、高いハシゴを立てました。それを見た町の衆は、「何をしているんだ」と驚いて集まって来ました。
「私は、これより天へ昇ります。皆さん、お達者で」そう言って、吉四六さんはハシゴを登り始めました。「危ない、危ない!」と、町の衆はハシゴを支えました。ゆらゆら揺れるハシゴから吉四六さんが落ちてきたら受け止めようと、畑の中を行ったり来たりする人たちもいます。しばらくして、「そんなに危ないと言うのなら、天昇りはやめ にしよう」と言って、吉四六さんがハシゴを降りたので、町の衆もほっと胸をなで下ろしました。さて、騒動の後の吉四六さんの田んぼですが、町の衆が足で土を掻きならしてくれたおかげで、すっかり代掻きを終えることができたそうです。

大分県に伝わる『吉四六話』

とんちの名人・吉四六さんの民話は、『吉四六話』として大分県の人々に親しまれています。その話数は二百数十にもなります。江戸時代の庄屋・廣田吉右衛門がモデルとされて いますが、創作話や他の地域の話もたくさん含まれています。
  今回紹介した話の他にも、子どもの頃の吉四六さんが主人公の「柿の見張り番」、キジを看板にして烏を売る「烏売り」、舟の渡し賃を値切ろうとした侍に高い渡し賃を請求する「川の渡し」など、ユニークな話がたくさんあります。魚取りが禁止されている川で、堂々と大きな鰻を獲る「川の鰻」という話を、国語の教科書で読んだ人もいるのではないでしょうか。

   

ライバルは熊本の彦一

肥後国(熊本県)にも、とんち話の『彦一ばなし』が伝わっています。
主人公の彦一は、八代城の城下町に住んでいた武士と言われていますが、実在したかどうかはわかっていません。定職にはつかずに、農業をしたり、傘貼りの内職をしたりして暮らしていたそうです。『彦一ばなし』には、殿様や町人だけでなく、化けギツネや天狗、河童などの空想上のキャラクターたちも登場します。また、ライバルの吉四六さんと対決する「知恵比べ」という話もあります。
『彦一ばなし』では彦一が勝利するストーリーになっていますが、『吉四六話』にも似た話があり、こちらでは吉四六さんが勝利します。お隣の国同士、ライバル意識があったのでしょうか。 とても興味深いですね。

   
 
     
     
 

十一月二十四日の寒い晩。貧しいおばあさんの家に、お坊さんが一夜の宿を求めてやって来ました。おばあさんは、お坊さんに何か食べさせてやりたいと思いましたが、家には食べ物がありません。
そこで、隣の家の田んぼへ行き、「お借りします」と言って稲の束をこっそり抜いて来ました。雪の上には、おばあさんの足跡がくっきりと残ってしまいました。おばあさんは、米粉の団子を入れて味噌汁を作って出しました。
お坊さんは「親切にしていただきありがとう。これからは良い事が起こるでしょう」と言いました。翌朝、勝手に稲を抜いたことを謝あやまりに行こうと外へ出ると、真っ白な雪が降り積もり、足跡はきれいに消えていました。
その後、おばあさんの暮らしは少しずつ良くなりました。あのお坊さんは弘法大師(空海)様だったということです。旧暦の十一月二十四日には、俵型の大師講団子を入れた温かい汁を食べ、弘法大師様のお祭りをするようになりました。

 
     
     
 

むかし、吉平という孝行息子がおりました。吉平の父は桜が大好きで、毎年庭の桜が咲くのを楽しみにしていました。 ある年の正月、老いた吉平の父は、重い病にかかってしまいました。「もう一度だけ、満開の桜を見て死にたいなあ」とつぶやく父を見て、吉平は桜に「どうか、おとうのために咲いてやってください。お願いです」と願い事をしました。
しかし、真冬に桜が咲くはずもありません。それでも、吉平は木の下で祈り続け、いつのまにか気を失っていました。翌朝、吉平が目を覚ますと、なんと桜が満開ではありませんか。桜を見た父は、みるみる元気を取り戻して長生きしたそうです。そして、これ以降、毎年旧暦の正月十六日頃に咲くようになったこの桜を、「十六日桜」と呼ぶようになったそうです。
この十六日桜、現在では愛媛県松山市の指定天然記念物になっていて、天徳寺の境内と、吉平の屋敷跡の2か所に植えられています。

 
   

『遠野物語』を読んでみよう

『遠野物語』原作:柳田國男/ 編著:柏葉幸子/ 絵:田中六大/偕成社

日本の民俗学を確立した柳田國男。その代表作『遠野物語』は、岩手県遠野地方に伝わる話をまとめた本です。皆さんもよく知っている「ザシキワラシ」や「カッパ」が登場する話も、この作品に収録されています。他にも、「オシラサマ」のように遠野に根付いている信仰なども知ることができます。今回紹介した本は、小学校中学年から読めるように編集されています。現実と不思議な世界の狭間に入り込むワクワク感を、読書を通して体験してみませんか?

   
   
     
 
 

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