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わたしの勉学時代

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建学の精神「自由で平和な一つの大学」を継承し、平和を希求しチャレンジする国際的教養人を育むことに力を入れている国立大学法人広島大学。
今回は、2015年4月より同大学の学長に就任された、越智光夫先生にお話を伺いました。
医師として常に学び、最高水準の技術を生み出そうと努力してこられた先生の姿を通して、学ぶことについて考えてみましょう。

体を動かすことが大好き

 私は、造船とタオルの地場生産で知られる、愛媛県今治市で生まれました。幼少期は時間が経つのが遅く感じられ、小学生の頃は夏休みが待ち遠しく思われたものでした。
今ではあっという間に一日が終わり、一月が経ち、気が付くと一年が過ぎ去っています。
父は高校で体育を教えていました。加えて、書道の授業で使う手本も書いている書家でした。父の運動能力はかなり高かったと記憶しています。
たしか、100m走では四国一の記録を4年ほど保持していたのではないでしょうか。オリンピックの予選決勝まで残ったとも聞いています。他にも様々なスポーツを得意としていて、バスケットボールなどの競技で国体(国民体育大会)にも出場していました。そんな父の血を受け継いではいませんでしたが、私も子どもの時分から運動が好きでした。小学生の頃は走り幅跳びをしていました。ソフトボール投げもなかなかの記録だったと思います。
運動神経が並はずれてよかったわけではありませんが、いろいろなスポーツを楽しくプレーしていました。

 

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小さい頃から運動が好きで、どんなスポーツでも楽しんで挑戦していました。

寮生活で大きな財産を得る

小学校時代を振り返ってみますと、印象的な体験をしたわけでも、将来の職業につながる出会いがあったわけでもありません。
ごくごく平凡な毎日を過ごしたと思います。考えることが好きで、少し算数が得意だったくらいでしょうか。
私にとって重要な岐路となったのは、松山市の愛光中学校・高等学校への進学です。今だから“分岐点”と言えるのであって、当時はそんなことを思いもしませんでしたが、結果として将来を左右する大きな選択になりました。
今治市からの通学は大変だったので、中学校入学直後から寮生活を送ることになりました。親元を離れて暮らすことも初めてなら、同年代の仲間と暮らすのも初めて。共同生活での作法など、新しく身につけたことも多かったですね。
共同生活のスタート時、寮生同士は他人です。それが、いきなり兄弟のような親しく近い関係となるのです。朝起きて食事をするところから、学校生活はもちろん、帰宅後の時間も一緒に過ごします。互いのことをよく知らない状況で、複数人と行動を共にします。親であれば言えるわがままも、がまんしなければなりません。相手を気遣って遠慮する場面もたくさんあります。中学1年生にとって、これは大変なストレスです。しかし、日々を重ねていく中で、互いをよく理解するようになり、徐々に人間関係が構築されていきました。一から新しい関係を築いていく経験は、私にとって大きな財産となりました。当然のことながら、寮には実に様々な性格や考え方を持つ仲間がいました。感心するほど頭のいい同級生もいました。そんな多様な相手と接することで、私自身も刺激を受け視野が広がったと思います。
当時は経験を積み重ねることで精一杯でしたが、大人になった今「愛光に進学して寮に入ってよかった」と実感しています。

自分で決断してこその前進

 愛光中学校では、卓球部に所属していました。進学校であったため強くはなかったのですが、私がキャプテンを務めた時に、部として初めて団体戦の対外試合への出場が叶いました。試合に出してもらえるようになり大変喜んだことを覚えています。
2年前、部の仲間と40数年ぶりに再会したのですが、やはり話題の中心はその団体戦のことでした。私は団体戦1勝、個人戦1勝と2勝できたのですが、団体戦では負けが重なってしまい最後の部員が試合に出られなかったんです。その時のことを皆が鮮明に覚えていて、試合ができなかった当人は「自分が試合をしていたら、必ず勝てていたのに」といまだに悔しがっていました。それほど、私たちにとっては印象的な思い出だったのです。
当時は満足に練習もできませんでしたので、寮の食堂のテーブルを合わせて卓球台をつくって練習していました。許された時間はたった30分でしたので、1球負けたら交代です。順番待ちをしながらの練習でした。勉強だけでは、このような鮮明な記憶として残らなかったかもしれません。
このように、しばらくは卓球を優先する生活を送っていました。ところが、それが影響したのかわかりませんが、中学3年生の時に成績が落ち込んでしまったことがあります。成績はだいたい上から4分の1あたりでしたが、あるテストで真ん中くらいにまで急降下。さすがに「これはいけない!」と危機感を覚えました。当時、私たち寮の仲間の間には「一生懸命に勉強するのは格好悪い」という雰囲気があったためか、試験中の勉強以外ほとんど勉強をしていませんでした。しかし、この時ばかりは強い意志を持って机に向かいました。寮の同室の同級生と一緒に1日1時間を自習に充てました。次のテストではかなり上位にまで上昇。何事も、他人から追い立てられて渋々取り組むと、良い結果は出にくいものです。結局は、自分で決断しなければ、本当の意味では前に進めないと私は思うのです。

 

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愛光中学校・高等学校に進学し、寮に入った経験が大きな糧になりました。

最高水準の技術を生み出す

 愛光時代は、よく読書をしていました。 ジャンルを問わない乱読で、気に入った作品があれば後輩に薦めることもありました。中でも北杜夫の随筆『どくとるマンボウ青春記』は印象に残っています。
作者が旧制松本高等学校から東北大学医学部に入るまでを描いた作品です。愛光の寮での出来事と重なるところがあっていいなと思ったのを覚えています。今思い返せば、医学部を目指したきっかけの一つになったのではないでしょうか。
大学受験に際しては、不得意分野だった社会科で苦戦しましたね。高校3年生のはじめは世界史をとっていたのですが、散々な成績だったので地理に変更。それも芳しくなく、政治・経済に変更したいと申し出ました。高校の恩師である砂田任叙先生からは「科目を何度も変更するなんて、受験をなめている」とお叱りも受けましたが、同時に助言をいただき、当時入試に社会科のなかった広島大学医学部へと進学することになりました。
大学を卒業後、整形外科に入局して津下健哉教授のもとで学びました。当時、手の外科の世界的権威でいらっしゃった先生に師事するため、世界中から人材が集まっていました。そんな先生のもとで学び、臨床の現場で働いてきた中で、私は患者さんに誠実に向き合うこと、常に最高水準の技術を求めることを大切にしてきました。
患者さんに寄り添う医療を実現するためには、高い技術が必要です。精神論だけでは命は救えません。私は島根医大に教授として赴任し自家培養軟骨の移植手術を行い、それが日本発の再生医療で初の保険適用となりました。この技術によって、自然治癒が極めて困難だった軟骨組織を治療することができるようになったのです。
そして、スポーツや交通事故などでケガをした、たくさんの患者さんを膝の痛みから救うことができるようになりました。常に新しいことを考え、最高水準の技術を生み出そうと努力を続けることが重要だと思っています。

 

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恩師・津下健哉教授と越智先生。 そしてテニスを楽しむ大学時代の越智先生。テニスの練習で疲れていても、読書は続けていたそうです。

人生は学びの連続

 人生はとても長く、若い皆さんからはゴールが見えないはずです。今私から申し上げられることは、進学がゴールではないということ、第1志望校合格=人生の勝者ではないということです。学問にピークはありません。高校や大学を卒業した後、社会に出てからも人生は学びの連続であると私は思います。
学び続ける中で、皆さんの能力が開花する時が必ず来ます。ただし、その時期には個人差があります。小中学校で勉強ができなくても、大学や企業で夢中になれるテーマに出合い、偉大な成果を残すかもしれません。受験で思うようにいかなかったとしても、そこからの再スタートで十分に巻き返しが可能です。最後まで諦めずに受験勉強することは大変大事ですが、どのような結果であっても、その後もしっかりと学び続けられる人であってほしいと思います。私もうまくいかなかったことは数多くありましたが、後から振り返った時に「うまくいくよりも、うまくいかなかったこの経験があるからこそ良かった」と思えるように努力してきたつもりです。
塾の先生や保護者の皆様には、子どもたちが学び続けられる環境を整えてあげてほしいですね。受験生を持つご家庭は、何かとピリピリしがちです。「受験に失敗したら人生が終わる」と、極端に追い詰められてしまう保護者も少なくありません。しかし、そうではありません。たとえ失敗したとしても、それは長い人生の一つの通過点にすぎないことを、ぜひ念頭に置いて子どもさんと向き合い励ましてあげていただきたいと思います。

STARTプログラム

 広島大学では、海外経験が少ない学部1年生が学校のサポートを受け海外体験する「*STARTプログラム」を実施しています。プログラム参加者は、長期休暇を利用して約2週間の海外渡航を経験します。一定期間滞在することで、学生たちは日本とは異なる環境や文化を深く知ることができます。 滞在中は、現地の大学で授業を受けたり、地元の学生とディスカッションを行ったり、地域の人々と流したりします。たくさんの出会いを通して、早い段階で世界に通用するグローバル人材として必要な能力を体験的に習得できる良い機会です。より高度な語学力も身につくことでしょう。広大生を目指す人は、ぜひ挑戦してみましょう!

 

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オーストラリアの大学生と活発なディス カッションをする広島大学の学生たち。

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