• 今月のタイムス特集①

2021年2月号特集① 世界・日本の重大ニュース2020

 2020年、最大のニュースは新型コロナウイルスです。世界的に大流行し、政治・経済・教育などあらゆる分野で社会に大きな影響を与えました。また、日本では、安倍晋三首相の辞任により菅義偉氏が内閣総理大臣に就任、アメリカの大統領選挙では、現職のドナルド・トランプ大統領にジョー・バイデン氏が勝利し、日米ともに政治に大きな動きがありました。これらの2020年に起きたできごとは、今後の社会をも大きく左右することになるでしょう。

 そして、入試における時事問題では、ニュースそのものだけではなく、関連する事柄についても出題されることが多いです。例えば、新型コロナウイルスで注目された世界保健機関(WHO)の役割などです。2020年を振り返りながら、それらについてもしっかりと確認しておきましょう!

 

※この記事の情報は2020年12月1日時点のものです。

【重大ニュース1】新型コロナウイルス感染症の大流行

▲緊急事態宣言前の品川駅。

▲緊急事態宣言中の渋谷スクランブル交差点。

なぜ大流行したのか

 2020年1月、世界保健機関(以下、WHO)は、2019年12月以降に中国湖北省武漢で確認されていた、原因不明の肺炎について、患者から新型のコロナウイルスが検出されたと明らかにしました。
 これまでにヒトに感染するコロナウイルスは6種類が知られていました。そのうち4種類は普通の風邪、残り2種類の重い症状を引き起こす「重症急性呼吸器症候群(SARS)」と「中東呼吸器症候群(MERS)」は、症状がわかりやすく感染者の隔離という有効な対策がとりやすかったため、世界的な流行にはなりませんでした。しかし、新型コロナウイルスは、感染しても症状がほとんど出ない人も多く、感染者がわかりにくいものでした。にもかかわらず感染力は強く、症状のない人でも知らない間に感染を広げる可能性があるため、食い止めるのが難しかったのです。そして、グローバル化により各国間の移動が盛んになっていたことも一因となり、急速に世界中に広がり、9月末の時点で死者が100万人を超える事態となりました。

\check/ 2024年から新千円札の絵柄となる北里柴三郎は、ペスト菌の発見などで感染症医学に貢献しました。

WHOが「パンデミック」を宣言

 当初は「緊急事態にはあたらない」と見ていたWHOですが、急速な拡大を受け、1月31日には感染が中国以外でも拡大する恐れがあるとして「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」、3月11日には感染症が世界的に大流行する「パンデミック」であると宣言しました。
 日本国内では、1月16日に初めて感染者を確認、2月3日には乗客が感染していたクルーズ船が入港し、感染拡大への懸念が高まりました。政府はこれらの状況を受け、3月2日から全国の小中高校に臨時休校を要請。9日には専門家会議により、感染が拡大しやすい条件である「3密」(密閉・密集・密接)が示されました。

\check/ WHOは世界の人々の健康を保つことを目的とする国際連合の専門機関のひとつ。本部はスイスのジュネーブ。アメリカのトランプ大統領はWHOの対応を批判し、脱退を表明しました。

東京五輪の延期が決定

 3月24日、安倍首相と国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が電話会談を行い、7月に予定されていた東京オリンピック・パラリンピックを1年程度の延期とすることで合意しました。その後、オリンピックは2021年7月23日、パラリンピックは8月24日開幕に決定。ただし、観客数の制限などを行う可能性があると発表されています。

緊急事態宣言の発令

 4月7日、政府は急速に感染の拡大している都市部の7都府県に、新型コロナウイルス対策特措法に基づく「緊急事態宣言」を発令。不要不急の外出自粛や施設の使用制限など、感染の防止に必要な協力を要請できるというもので、16日には全国に拡大されました。海外で実施された、罰則などで外出禁止を強制できるロックダウン(都市封鎖)に比べると強制力が弱いものでしたが、一定の効果があり、感染者の減少に伴って5月14日には39県で解除、25日には全都道府県で解除されました。
 この影響で、海外に比べて遅れていた、授業などをインターネットで行う「オンライン化」や、現金を使用しない「キャッシュレス化」、また、柔軟な働き方を認める「働き方改革」などの推進が加速しました。

\check/ 都市部への人口集中の問題や国と地方自治の関係なども注目されました。

▲緊急事態宣言の解除後、大阪府は独自指標「大阪モデル」を設定。達成状況に応じて、万博記念公園(吹田市)の太陽の塔を赤・黄・緑の3色でライトアップしました。

経済回復と感染防止の両立

 緊急事態宣言によって経済活動は大きな影響を受け、2020年4月~6月期の*国内総生産(GDP)の実質成長率が戦後最悪の下落となりました。政府は、特に打撃の大きかった飲食業や旅行業を支援するため、7月以降「GoToキャンペーン」などの政策を始めました。
 ワクチンの開発や治療法の研究などが世界中で進んでいますが、終息までにはまだまだ時間がかかると言われており、一人ひとりが感染拡大を防ぐために考え、行動する「新しい生活様式」が求められています。

一定期間内に国内で新たに生み出されたモノやサービスの価値のこと。

イギリスのEU離脱

 イギリスでは、2016年の国民投票で欧州連合(EU)離脱への賛成票が過半数を制したものの、離脱交渉が長引き混乱が続いていましたが、離脱強硬派のジョンソン首相のもと、1月末に正式に離脱しました。しかし、新たな貿易協定の制定についてなどで対立が続き、依然として課題が残っています。

【重大ニュース2】「5G」サービス開始

 次世代の高速移動通信方式「5G」のサービスが、3月25日から開始されました。これまでの4Gに比べて通信速度が数十倍速く、大容量の通信が可能です。多くの機器をインターネットに同時接続できるため、自動運転技術の向上や遠隔診療の普及などが見込まれています。新型コロナウイルスの影響で大々的なイベントなどはなく、静かな幕開けとなりましたが、今後、様々な分野での活躍が期待されます。

【重大ニュース3】レジ袋の有料化

 7月1日からプラスチック製のレジ袋を無料で配ることが禁止され、全ての店で有料にすることが義務化されました。プラスチックごみが海洋を汚染していること、燃やすと地球温暖化の原因となる温室効果ガスである二酸化炭素を排出することなどが問題視されており、プラスチックごみを削減して環境を守るための取り組みです。ですが、欧米などでは、新型コロナウイルスの流行により感染症対策の観点からレジ袋を再び無料化する動きも出ており、様々な議論を呼んでいます。

\check/ 地球温暖化対策のための国際ルールである「パリ協定」(2015年採択)が、2020年から開始しました。しかし、温室効果ガス排出国第2位であるアメリカのトランプ大統領は離脱を表明しています。

【重大ニュース4】菅内閣が発足

 9月、安倍晋三首相が持病の悪化のため辞任し、約7年8か月に及んだ歴代最長の政権に幕が下りました。そして、官房長官を務めた菅義偉氏が第99代内閣総理大臣に就任し、菅内閣が発足。菅首相は安倍政権の継承を掲げており、新内閣の閣僚20人のうち11人が安倍内閣でも閣僚を務めていました。ですが、デジタル庁を新設してデジタル改革相平井卓也氏を起用するなど、新たな政策も打ち出しています。また、規制改革にも意欲を示し、行政改革・規制改革担当相河野太郎氏を起用。河野大臣は、就任翌日に自身のウェブサイトに誰でも意見を投稿できる「行政改革目安箱」を設置するなど、迅速な行動で話題となりました。

\check/ 内閣は法律に基づいて政治を行う「行政権」を持っています。

▲菅義偉首相(前列中央)と閣僚。 写真:毎日新聞社/アフロ

【重大ニュース5】アメリカ次期大統領にバイデン氏

2020年 その他の注目ニュース

高輪ゲートウェイ駅開業

 3月14日、JR山手線で49年ぶりの新駅となる高輪ゲートウェイ駅が開業しました。東京オリンピックに合わせての暫定開業であり、本開業は2024年を予定しています。AI(人工知能)を活用した無人決済店舗や、AIロボットによる乗換案内や警備など、様々な最新技術が導入され、実証実験が行われています。

\check/ 1964年東京オリンピックの際には東海道新幹線が開通しました。

新貿易協定USMCAが発効

 7月1日、1994年から続いた北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる貿易協定として、アメリカ・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が発効されました。自動車の関税の条件が厳しくなり、アメリカにある日本の自動車メーカーなどにも影響を与えます。

\check/ 日本が参加している国際的な経済協力の枠組みは、アジア太平洋経済協力(APEC)、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)などがあります。

令和2年7月豪雨

 7月は長期にわたり梅雨前線が停滞し、3日から31日にかけて、熊本県を中心に九州や中部地方など、日本各地で集中豪雨が発生しました。気象庁は3回の「大雨特別警報」を出し、熊本県の球磨川や山形県の最上川が氾濫するなど、大きな被害が出ました。新型コロナウイルス感染対策のため、収容人数が制限されて避難所が不足したり、県外からのボランティアが入れず復旧作業が遅れたりといった問題も発生しました。

「富岳」2期連続世界一に

 国立研究開発法人理化学研究所は、11月17日、富士通と共同開発したスーパーコンピュータ「富岳」が、計算速度を競う「TOP500」など4つの世界ランキングで、8年半ぶりに首位を奪還した6月に続き、2期連続の1位を獲得したと発表しました。第2位の「サミット」(アメリカ)に約3倍の差をつけた計算速度の他、シミュレーションなどの計算方法や、人工知能の学習性能、ビッグデータの処理性能を示す部門でも2位以下に大きな差をつけました。2期連続の4冠は世界初となる快挙です。「富岳」は、すでに新型コロナウイルス感染拡大の対策研究シミュレーションなどで性能を発揮しており、今後のさらなる成果が期待されています。

▲ロゴは、名称の由来である富士山をモチーフとしたデザインになっています。©RIKEN

藤井聡太棋士、最年少で2冠に

 将棋の藤井聡太棋士が、8大タイトルの「棋聖」を7月16日、「王位」を8月20日に獲得して2冠となり、8段に昇進しました。初戴冠、2冠、8段昇進のいずれも史上最年少であり、初戴冠は30年ぶり、2冠は28年ぶり、8段は62年ぶりの記録更新です。藤井棋士は、2016年10月に14歳2か月で史上最年少のプロ棋士となって以来、様々な記録を更新し続けています。
 将棋の研究にAIを活用し、AIを超えたとも言われた藤井棋士ですが、棋士とAIの対決について尋ねられ、「対決の時代をこえて、共存という時代に入ったのかなと思います。今の時代においても、将棋界の盤上の物語は不変のものと思いますし、その価値を自分自身伝えられたらなと思います。」と答え、多くの将棋ファンの感動を呼びました。

▲自筆の色紙を手に笑顔の藤井聡太棋士。 写真:日刊スポーツ/アフロ

大坂なおみ選手、全米オープン優勝

 テニスの大坂なおみ選手が、9月12日に全米オープンで2度目の優勝を果たしました。アメリカでは、5月に白人の警察官が黒人の男性を死亡させた事件を契機に、人種差別への抗議運動が激しく行われています。大坂選手は事件で亡くなった人の名前が入ったマスクを着けて出場したことでも注目を集めました。

野口聡一さん、宇宙へ

 11月16日、日本人宇宙飛行士の野口聡一さんら4人が搭乗した宇宙船「クルードラゴン」が打ち上げられ、国際宇宙ステーション(ISS)に到着しました。「クルードラゴン」は、民間の宇宙船として初めて運用段階に入ったもので、野口さんは「スペースシャトル」、「ソユーズ」、「クルードラゴン」と、3つの異なるタイプの宇宙船に乗った、初めての日本人飛行士になりました。今回の計画は、国際宇宙ステーションでおよそ6か月の長期滞在を行う予定となっています。

バイデン氏がトランプ氏に勝利

 11月3日に行われたアメリカ大統領選挙で、民主党のジョー・バイデン氏が、現職で共和党のドナルド・トランプ氏に勝利しました。現職の大統領が敗北するのは28年ぶりとなります。敗北の背景には、新型コロナウイルスを軽視し、感染者数・死者数とも世界最多となる事態を招いたこと、過激な発言で人種差別問題を助長したことなどがあると言われています。トランプ大統領は、新型コロナウイルス対策として導入された郵便投票で不正が行われたと主張し、敗北を認めていませんが、明らかな証拠は出ておらず、結果が覆ることはないとの見通しです。
 バイデン政権が始まれば、アメリカの政策は大きく様変わりすることになります。例えば、トランプ大統領は「自国第一主義」を掲げ、様々な国際協定などから離脱してきましたが、バイデン氏は大統領に就任後すぐにこれらに復帰すると明言しています。また、有色人種女性のカマラ・ハリス氏がアメリカ史上初の女性副大統領となることも、世界の注目を集めています。

\check/ 多民族国家であるアメリカでは人種差別が大きな歴史的問題となっています。

▲勝利を喜ぶジョー・バイデン氏(右)とカマラ・ハリス氏(左)。 写真:The New York Times/Redux/アフロ