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2020年1月号 特集①

実践校1 常翔啓光学園中学校・高等学校

 「熱心であれ」「力強くあれ」「優しくあれ」を校訓として掲げる常翔啓光学園。カトリック系の男子校として1957年に「啓光学園中学校」、1960年に「啓光学園高等学校」を開校し、2008年に現在の校名に変更、宗教色のない共学校となりました。しかし、生徒一人ひとりを大切にするという前身校からの教育方針は現在に至るまで引き継がれ、きめ細やかな指導で知られています。
 入試部の秋山先生と松本先生に、教師と生徒の「対話」について、お話を伺いました。

教師と生徒の〝距離〟が近い学校

―教師と生徒の「対話」を大切にされているとのことですが、男子校だった頃からなのでしょうか?

秋山先生「元々、一人ひとりを大切にするという中学教育から始まっている学校なので、カトリック系でなくなった後も、その教育理念は引き継がれています」
松本先生「私は男子校だった頃に赴任したのですが、教員が変わっていないこともあり、校内の雰囲気や伝統は保たれていると感じますね。良い部分はつながっていて、一貫して教師と生徒の〝距離〟が近い学校です。職員室に生徒が自分から来るような学校で、当初はどうしてこんなに来るんだろうと驚きました。勉強に関する質問だけではなく、世間話などをしに来るんです」

―生徒が気軽に入れるような職員室なのですね

秋山先生「職員室は本校の自慢のひとつで、ガラス張りで中の様子がよく見える設計になっています。入口には担当教科別に色分けしてある座席表を掲示しています。目当ての教師がいなくても、その教科の他の教師に聞くことができるので、
わからないことをそのままにしてしまうことがありません。職員室前の自習スペースは、休憩時間はもちろん、朝や放課後もたくさんの生徒で賑わっていて、入待ちや出待ちをされていることもあります(笑)」

―どのような生徒が多いのでしょうか?

秋山先生「様々なタイプの生徒がいますが、全体的には落ち着いた子が多いです。各学校の先生が、偏差値や入試日程だけではなく、本校の校風に合うであろう生徒に受験を勧めてくれ、生徒や保護者の方も、実際に見学した上で選んでくれています」
松本先生「出身地も様々ですね。本校がある枚方市だけではなく、年々広い地域から来てくれるようになってきており、遠いところだと兵庫県から通学している生徒もいます。地域が広がると、それまでの小中学校での常識が通用しませんが、それがかえっておもしろいようです」
秋山先生「特進選抜コースは中高6年間同じクラスですが、未来探求コースは外部入学の生徒と高2から同じクラスになります。それもいい刺激になっていますね」
松本先生「高1の1年間はお互いの慣れの期間です。外部からの生徒は常翔啓光学園の、常翔啓光学園しか知らない生徒は他校の、異なる価値観を行事や部活を通して知ってもらいます」

ガラス張りの職員室。手前には自習スペースがあります。
授業間の短い休憩時間にも、提出物などを持った生徒が次々と訪れます。

双方向の進路指導

―教育プログラムや進路指導にも教師と生徒の〝距離〟の近さは活かされていますか?

秋山先生「多様化する社会で活躍できる幅広い力を養うことを目的に、K¹GOALSと名付けた習得するべき12の力を掲げています。校訓を具体的な力に落とし込み、身につけるための活動です。グローバル教育やキャリアデザイン教育にも力を入れていますが、留学などは希望者を対象としています。全ての生徒に同じように経験させるのではなく、それぞれの適性を重視しています」

―キャリアデザイン教育とはどのようなものですか?

秋山先生「学園内に大阪工業大学・摂南大学・広島国際大学と3大学があり、中高大の連携ができています。現在は大学での学びも多様化していて、学科名だけでは具体的な内容をなかなかイメージできません。中高低学年の時から、模擬授業やセミナーなどを通じて何を勉強すれば何の職業につながるのかを知っておくと、将来の目標も定めやすく、大学進学後のミスマッチもなくなります」

―そのような勉強が最終的な進路指導にもつながっていくのですね。

秋山先生「ただ単に大学へ合格することだけを目的とするのではなく、将来何になりたいのか、どうしたいのかを明確にして、それを実現するための進路決定ができるよう手助けをしています。生徒自身の希望だけではなく、こちらからも生徒の持っている適性やポテンシャルに応じて、こうしてみたらどうかと提案する、双方向の進路指導を行っています」
松本先生「その際、生徒や保護者の方だけでは出てこないような道を示せるよう意識しています。たとえ一般的には知名度が低くても、特色のある勉強ができる大学は多いです。しかし、放っておいたらそういうところには気付かず、せっかくの出会いもないままに終わってしまいます。そこで、こんな大学もあるよと勧めると、生徒の方も私たちの言うことをきちんと受け止め、自分でも探求してくれます」

2011年に新校舎が完成。

入学前や卒業後でも

―入学前の説明会や事前相談会から個別対応を心がけられていると伺いました。

秋山先生「まず常翔啓光学園のファンになっていただきたいという思いがあります。全ての生徒に入学してほしいというわけではなく、他の学校、例えば同じ学園内の常翔学園の方が合っていると思えば、そちらを勧めることもあります」
松本先生「常翔啓光学園は、教師と生徒が対話をしながら二人三脚で一緒にやっていこう、という方針ですが、常翔学園は自学自習を重視していて、教師は必要以上に手を出しません。人数も多く、スケールの大きな教育をしている学校で、そちらの方が向いている生徒もいます」
秋山先生「それぞれの適性に応じて、兄弟姉妹であっても常翔学園と常翔啓光学園に分かれるというパターンも多いですね」

―相談会などで印象に残っている生徒のエピソードがあれば教えてください

秋山先生「個別相談では、外部模試の成績などを持参してもらって今後の勉強方法のアドバイスなども行っていますが、以前、成績は思わしくなく、生徒本人は「楽しければどこでもいい」というようなことしか言わず、お母さんばかり話しているといった親子に「こんな成績では無理です。うちには来なくていい」と言ったことがあります。受験生にそんなことを言っていいのかと不満そうでしたが、駄目なものも大丈夫だと言ってしまって、このまま受験させてしまったら、君の人生が狂ってしまうだろうと正直に伝えました」
松本先生「秋山先生ならではの対応ですね。私はそこまで強くは言えません(笑)」
秋山先生「ですが、その生徒、次の相談会にも来たんです。今度は1人で。私の話を聞いて塾に通い始めて、模試の成績が少し上がったからもう一度見てほしいと。そこで、成績を見て、まだちょっと届かないけど、こういう勉強はできるか?と、改めてアドバイスをしたところ、やりますと即答。きちんとやり遂げて、見事合格しました」
松本先生「この生徒のように、やろうと声をかけたら一緒にやってくれる子、一緒にがんばってくれる子が本校には向いていると思います」
秋山先生「他の学校と比べると、夏休みが少なかったり、校内でのスマートフォン・携帯電話の使用が禁止だったりして、1年生の時はきついと言う生徒が多いです。でも、3年生になると、常翔啓光学園に来て良かったと言ってくれるようになります。きついかもしれないけれど、教師の手助けがきちんとあって、個別に対応しているので、最終的には皆満足して卒業していきます」
松本先生「そうじゃなかったら卒業生がこんなに遊びに来ないでしょうね。夏休みには卒業生がたくさん来てくれます」
秋山先生「そうですね。在学中に文句ばかり言っていたような生徒ほど、よく来てくれる気がします。そういう生徒がきちんとした大人の対応を身に付けて、人生の節目節目に報告に来てくれる。きちんと叱っておいてよかったなと思います」
松本先生「私たちにとって一番嬉しいことですね。卒業しても、顔を見せに来てくれて、いろんな話を聞かせてくれる。この仕事をやっていて、こんなに楽しいことはないです」
秋山先生「教師と生徒の〝距離〟が近いので、卒業してからも話がしやすいんでしょうね。在学中から、担当のクラスやコース以外の生徒にも気軽に声をかけます。私自身も入試部長となり、担任としてクラス経営にあたってはいませんが、だからこそ全生徒の担当のつもりで指導に当たっています。本校の教育方針に興味を持っていただけたのであれば、とりあえず一度、説明会や相談会に足を運んでほしいですね。ぜひ実際に会って、話をしましょう!」

教科別の居室はなく全員が同じ職員室で過ごすので、教師同士も常に学年・コース・教科の枠を超えて話し合うことができます。学校全体が過ごしやすく、雰囲気のいい風が吹いています。

常翔啓光学園中学校・高等学校 大阪府枚方市禁野本町1-13-21
TEL:072-807-6632(入試部直通)
https://www.keiko.josho.ac.jp

実践校2 佼成学園女子中学高等学校

 1954年の開校当初より「行学二道」の仏教精神を教育方針として、他者の生きる力となれる女性の育成を目指す佼成学園女子。海外への修学旅行や留学はもちろん、全校一丸となって挑む「英検まつり」や、音楽・美術などを英語のネイティブ教員によって行う「イマージョン教育」など、英語教育には特に力を入れています。2014年には、国際的に活躍できるグローバルリーダー育成を重点的に行う女子高校として、文部科学省が指定する「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」に選抜されました。
 異文化との触れ合いや、卒業生によるチューター制度、皆で協力しお互いに刺激しあうことなどを通して、“対話的な学び”を実践しています。

5名のネイティブ教員が常勤し、日々の授業を行っています。

特色のある英語教育

 グローバルな舞台で活躍するための「英語力」を養うことを軸とした教育を行っており、6月と10月の年2回、学校全体で英検に挑戦する「英検まつり」を開催しています。まず、毎朝25分間「英単チャレンジ」として英単語と英熟語の暗記を行い、クラスごとに「英単語・英熟語シートの達成数」を掲示します。希望者への「英検対策講座」の実施や、二次試験の面接対策としてネイティブ教員との1対1の練習なども行います。英語科以外の教員も全員が英検に取り組む全校行事で、期間中は「英検まつり」と呼ぶに相応しい雰囲気が校内に漂います。一人ではなく、みんなで楽しみながら挑戦することで、お互いに刺激しあい、全体的な成績向上につながっています。
 英語の授業では、ネイティブ教員を中心に、プレゼンテーションやスピーチ、ゲームなどを通じて、英語で「伝える」「話す」ことの喜びを感じるような指導をしています。また、英語の他に、音楽や美術といった実技科目をネイティブ教員が英語で行うイマージョン教育も取り入れ、言葉だけではなく、文化や習慣からも異文化に触れる機会を提供しています。
 そして、これらを通して身に付けた「使える英語」の集大成として、様々な海外研修プログラムも用意されています。「英語力」は将来の選択肢や可能性を広げる有効な道具であり、今だけこなせばいいものではないと伝えることで、生徒の向学心や好奇心を一層引き出すことができます。

「2017年度スーパーグローバルハイスクール(SGH)フォーラム」にて文部科学大臣賞受賞。

人と交わり、人に学ぶ学園生活

 行事の多さも特長のひとつで、「英検まつり」の他にもオリエンテーション合宿や、スポーツフェスタなど、ほぼ毎月行事があります。多彩な行事にクラス全員で取り組むことで、全体のモチベーションが上がり、得意不得意を補いあう空気が自然と生まれます。
 行事だけではなく、勉強でも「受験は団体戦」をスローガンに、学習合宿や夜8時半まで開かれる自習室など、仲間と励ましあい、一丸となって勉強に集中できる体制を整えています。通年開かれている「特別進学学習」では、卒業生が自分たちの経験に基づいた進路や学習方法などのアドバイスをしてくれるチューター制度があり、先輩たちも「力強い味方」になってくれます。受験を終えた高校生からは、「みんなと一緒だから、がんばれた」という言葉が毎年届きます。
 このように、行事も勉強も、クラス全体、学校全体で取り組んでいます。一緒に困難を乗り越える学園生活の中で、それぞれの心が育まれます。成功体験や達成感で心が満たされていくにつれ、少しずつ自分を出せるように、他人を認められるようになっていきます。

「中間試験の廃止」という新しい試み

 教育改革の流れに沿って、新たな学びの環境を整えるため、2020年度からは現在の各学校行事を大きく変革していきます。そのうちの最も大きな試みが、「中間試験の廃止」です。新たな教育指針の柱となる主体的な学習には、一定のまとまった時間が必要であり、生徒の思考や表現のための時間を最優先にしたいという考えからです。多様化する大学入試選抜に向けて、従来のような知識偏重型の試験に向けた学習でなく、生徒が主体的に学習計画を立てて、充実した探究や発表を行う機会を確保します。この試みは現在の全ての教育活動の在り方に影響を及ぼし、全国レベルで新しい教育の血を巡らせることになるでしょう。
 このように、佼成学園女子中学高等学校は、時代を先取った教育をするために、変化を続ける学校です。新しい世界にどんどん飛び込んでいくチャレンジ精神やパワーあふれる生徒に向いています。異文化と触れ合い、人と交わり、対話を重ねることで自らを成長させ、やがては国際的・社会的な課題の解決に向けて柔軟に対応できるようになる、そのような人材の育成を目指しています。

強化指定部のハンドボール部・バスケットボール部をはじめ、多くの部が日々の勉強と両立しながら活発に活動しています

佼成学園女子中学高等学校 東京都世田谷区給田2-1-1
TEL:03-3300-2351(代)
 https://www.girls.kosei.ac.jp