関塾が発行する親子で楽しむ教育情報誌、関塾タイムス

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2019年1月号 特集②

日本・世界の“お風呂”事情

 日本のように、湯につかってリラックスする入浴文化は、実は世界のスタンダードではありません。多くの国や地域では、湯船の中で髪や体を洗い、浴槽の湯は一人で使い切ります。あくまで汚れを落とすことが目的であり、疲労回復やリラックスのために入浴しないようです。洗い場と湯船が別々の日本とは異なりますね。また、オーストラリアやアフリカなどといった水が貴重な地域では、手早くシャワーで済ませます。入浴文化には水事情も深く関係しているようですね。
 では、温泉はどうでしょう。日本では、古来より傷や病気を癒す“湯治”をする人がたくさんいました。泉質ごとの効能もよく理解して利用していたようです。また、“ 湯垢離”といって、神社仏閣に参詣する前に身を清める方法の一つとして、温泉が利用されていました。もちろん海外にも温泉はたくさん湧いていて、保養地として賑わっています。
 そんな海外の温泉文化は、アウトドアの要素が強いようです。日本では、多くが旅館や公衆施設に湯を引いたり汲んだりして利用しますね。海外では自然に湧いたそのままの温泉を楽しみます。あるいは、整備された保養地では、プールのように大きな野外浴場で水着姿の男女が混浴します。それでも、温泉が「気持ちいい」ことは万国共通のようですね。

ハンガリーのセーチェーニ温泉。
左のプールのようなものが温泉です。

入浴の方法いろいろ

 入浴の方法には、いくつかの種類があります。まず、肩まで湯につかることを「全身浴」といいます。最もよく知られている入浴方法です。次に「半身浴」ですが、こちらは、みぞおちから下で入浴します。中でも、腰から下で湯に入ることを「腰浴」と呼びます。また、仰向けに寝て耳から下を温める方法を「寝浴」といいます。しかし、これをするには相応に広い湯船が必要なので、一般家庭では向かないかもしれません。温泉地などで見かける足湯は、膝から下を湯に入れる「足浴」という入浴方法になります。最後に、湯につからずシャワーを浴びるのは「シャワー浴」です。これらの入浴方法には、それぞれ異なるメリットがあります。

コラム日本の銭湯文化

“お風呂好き”な日本人ですが、今のように肩までつかる浴槽が登場したのは、江戸時代の初期でした。しかし、内風呂を置けたのは、一部の家だけ。江戸の庶民は銭湯( 湯屋、風呂屋)に通うのが一般的でした。銭湯では「戸棚風呂」といって、膝の位置まで湯を張る半身浴だったそうです。そして、焼いた小石に水をかけて蒸気を出し、上半身を温めていたようですよ。
江戸時代中期以降、銭湯は庶民の社交場として発展しました。2階の広間では、入浴客がお茶を飲んだり菓子を食べたり、囲碁・将棋を楽しんだりしていたそうです。ちなみに、江戸の終わり頃までは、銭湯は混浴だったそうですよ。今とはまったく違いますね。

江戸から明治にかけて活躍した歌川芳藤の『新版猫の温泉』。入浴は人々の娯楽の一つでした。

効果的な入浴方法を知ろう

13ページでは、様々な入浴方法を紹介しました。では、どんな入浴が、どのような場合に効果的なのか。皆さんにおすすめしたい方法をまとめました。
全身浴
 肩までつかる全身浴には、様々な効果が期待できます。東京ガスの「都市生活研究所」が発表したレポートによると、全身浴によって疲労の予防・緩和、良質な睡眠、リラックス効果などを得られるそうです。
 全身浴では、温熱作用、水圧作用、浮力作用を受けます。温熱作用は、体を温めることで皮膚の毛細血管が広がって血流が良くなるというものです。また、一度上がった体温が下がっていく中で、適度な睡眠へ導く効果も期待できます。水圧作用は、全身浴で体にかかる水圧が、血流やリンパの流れを良くするというもの。さらに浮力作用は、湯船の中で働く浮力により、筋肉や関節を休めることができ、体の緊張を解きほぐします。このように、湯船にしっかりとつかることで、様々なメリットを引き出せるのです。ぜひ取り入れたいですね。
「都市生活研究所」によると、全身浴を行うのは、睡眠の2~3時間前が良いそうです。熱すぎない40℃程度の湯に約10分、肩までつかりましょう。また、全身浴を1か月間ほど続けると、睡眠障害の解消やニキビ体質の改善なども期待できると考えられています。ぜひ継続したいですね。
半身浴
 熱い湯は体の負担になる、全身浴の水圧が苦手という人は、半身浴を取り入れましょう。38℃の湯で20分ほど半身浴をすると、40℃の湯に10分全身浴した場合と同じくらい温まり、リラックス効果もあります。ただし、上半身を冷やさないよう、浴室内を温めておく、温めたタオルを肩からかけるなどの対策を忘れずに。
シャワー浴
「都市生活研究所」によると、シャワー浴は朝の目覚め時や気分転換したい時などに効果があるそうです。なかなか眠気が取れなかったり、勉強に集中できなくなったりしたら、シャワー浴をしてみてはいかがでしょうか。

コラム行事と“お風呂”

 “お風呂”は日本の行事とも深く関わっています。5月5日の端午の節句といえば、菖蒲 の葉や根を入れる「菖蒲湯」ですね。菖蒲は、古来より病邪(=体に有害なもの)を払う薬草とされてきました。ハーブのような爽やかな香りを放つことから、薬湯として親しまれてきたのですね。また、葉の形が刀に似ていることから、男の子の縁起物としても伝わってきました。今でも、この菖蒲湯に入ると、暑い夏を乗り切ることができるとされています。  また、毎年12月22日頃の冬至では、湯船に柚子を浮かべる「柚子湯」に入る習慣があります。柚子湯に入れば風邪をひかないと言われていますが、科学的に、血行促進効果により風邪予防、冷え症改善などの効果があることもわかっています。冬至に限らず、冬の寒い日には柚子湯を試してみるといいかもしれませんね。

柚子湯

「* 浴育のすすめ」ってなに?

 東京ガスが推奨する、「浴育のすすめ」を知っていますか? 親子で楽しくコミュニケーションしながら入浴する浴育には、いろいろと嬉しいメリットがあるのです。
 親子でお風呂に入ると、不思議と会話が弾みます。学校であったこと、友達のこと、覚えたばかりの歌のことなど、入浴のゆったりとした時間なら話しやすいですよね。東京ガス「都市生活研究所」の調査によると、他にも“しりとり”や“なぞなぞ”といった頭を使う遊び、“ごっこ遊び”などをしている親子がいるようです。そして、驚くことに、入浴を“学び”の時間にあてているという家庭も少なくないようですよ。アルファベットや九九の練習、暗記の練習などをしているそうです。東京ガス「都市生活研究所」によるアンケートでは、
「数字を遊びながら覚える」
「英語での質疑応答をする」
「曜日、月、くだものなど簡単な英単語を出し合う」
「浴室に日本地図が貼ってあり、都道府県クイズをしている」
といった、小学生の保護者からの回答がありました。また、「リビングのようにテレビや本などがないので、コミュニケーションを取りながら集中して勉強できる」や、「子どもは、風呂の中で集中力が上がる。楽しんで勉強している」など、入浴は〝学び〟にとって有意義だと実感している家庭もありました。
遊びながら親子で楽しく学べる場。それが入浴の時間なのかもしれません。家庭での親子一緒の入浴は、だいたい幼稚園から小学生までということで、限られた期間の貴重な時間とも言えます。小学生の塾生の皆さん、最近おうちの方と一緒にお風呂に入っていますか?

*「浴育のすすめ」は東京ガスの登録商標です(登録第5307196号)

冬の入浴の注意点

 いかがでしたか?  “お風呂”の効果や魅力について、わかっていただけたでしょうか。最後に、冬場の入浴について、気を付けたいことをお知らせします。
 まずは、何といっても冷えないようにすること。濡れた体を外気にさらしたままだと、冷えて風邪をひいてしまいます。全身浴は肩までしっかりとつかりましょう。「冷たいバスタブの縁にもたれると首が冷えてしまう」という人は、バスピローもおすすめです。お湯を張る際にシャワーを使うなどして、浴室に蒸気を閉じ込める工夫をするのもいいですよ。温かい蒸気に包まれ入浴しながら深呼吸すれば、喉の乾燥を防ぐこともできます。また、入浴後はすぐに体を拭き、冷やさないようにしてください。髪の毛も放っておかずに、ドライヤーでしっかりと乾かしましょう。